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臥頭狂一のエロ小説ブログ。※18歳未満閲覧禁止。

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あかね色のやくそく -に- (48枚) 


「放課後、教室で待ってるから……」

 茜音は隣のクラスの暴君、柴田を蹴り倒した。昨日、拓海を泣かせてくれたお返しだ。
 毎度のことだった。拓海をいじめられてだまっている茜音ではない。柴田を打ち負かすのも、これで何度目か覚えていないくらいだ。
 朝いちばんの喧嘩は、茜音の圧勝に終わる。しかし、敗れた柴田の様子がおかしい。いつもなら憎まれ口のひとつでも叩くところなのに、妙に落ち着きがなかった。




「いてて……この暴力女」
 からだの大きな少年が床に尻餅をついた。教壇に背をもたれさせて、目を白黒させながら頭をぶるぶると振っている。
「懲りないわね、柴田!」
 少年の前に立っているのは茜音だった。今日の彼女は珍しくひらひらした短いスカート姿だったが、立ち振る舞いはいつもと変わらない。勝気で活発なおさげの少女だ。腕を胸の前に組み、脚を大きく肩幅に広げている。
 たったいま、柴田をハイキックで倒したところだった。空手などやったこともなかったが、TVで見た格闘技番組を真似してみたら見事に決まった。蹴るときにスカートがまくれあがったことも気にせず、茜音は意気揚々としていた。
 クラスの者たちは遠巻きにふたりを好奇な目で見物している。「また柴田、やられてるよ」と、女子たちがくすくす笑う声も聞こえた。
 茜音が怒鳴りこんでくるのは、いまや日常茶飯事になっていた。拓海がいじめられると、必ず隣のクラスからお返しにやってくる。五年生のクラス替えが行われてからは珍しい光景ではなくなっていた。
 すこし過保護ではあるものの、いじめをしたり意地悪をするほうがもちろん悪い。茜音は正義感がつよく、不正を許さないので人気があった。端正な容姿も手伝ってか、彼女のゆき過ぎた行動も大目に見られている。あきらかに暴力による仕返しではあったが、先生にいいつけたりする者はいなかった。
 拓海はといえば、教室の入り口で不安そうに成り行きを眺めている。平和主義者の彼は、できることなら話し合いで解決してもらいたかった。けれども行動力の塊である幼なじみがそれを許さない。
「いい? 拓海を叩いたりいじめたりしたら、許さないんだからね」
 人差し指を突きつけ、高らかに宣言する。まるで正義の味方だった。マントが似合いそうだ。座りこんでいる柴田は茜音よりもずっとからだが大きいが、うな垂れて負け犬の姿を晒している。敗北した悪役といった格好だった。
 顔立ちも対照的だった。ぱっちりした目で睫毛が長く、美少女といっても差しつかえない茜音。鼻筋がやけに長く、目の小さい柴田はマントヒヒに似ていた。唇は分厚く、頬にはにきびが吹き出している。誰の目にも、ふたりの間には大きな隔たりがあるように見えた。
「柴田……かっこ悪い」
「いつも威張ってるくせに……」
 女子たちの間でひそひそと嘲る声がしている。報復を恐れているのだろう。男子に口を開く者はいない。しかし、その目には蔑みが表れていた。いつも小突かれているので、いい気味だと思っているのかもしれない。
 少年は蹴られた顎を押さえながら、淀んだ瞳でクラスメイトたちを見回した。視線が合うと、男子も女子もみな目を逸らす。茜音を除いて、逸らさないのはたったひとり。教室のドアに手をかけたまま立ち尽くしている拓海だけだった。心配そうに柴田を見つめている。
 いつもおどおどしているくせに、哀れみをかけてやがるのか。柴田は自分を蹴った茜音より、拓海に腹を立てていた。泣き虫のくせに。幼なじみがいないと何もできないくせに。
「聞いてるの? 今度やったら、このくらいじゃ済まさないんだからね」
 言い捨てて、おさげ髪の少女がきびすを返した。スカートなのに、大股に歩く。元気な男の子のようだ。歩くたびに揺れる結われた髪を、柴田の小さな目が見つめていた。


 昼休み。茜音は女友だちと談笑に花を咲かせていた。隣には拓海もいる。給食を食べ終えると、即座に茜音のクラスへと駆けてくるのだ。拓海のクラスに茜音が怒鳴り込みにいくのと同じように、こちらも見慣れた光景になっていた。
 拓海はほとんど話の輪に入ることはなく、それでいて楽しそうに話す茜音の顔を見つめている。さすがに人前で抱きついたりはしないが、しっかり茜音の横に座っていた。もちろん別のクラスである拓海の席ではない。茜音のクラスメイトが気をきかせて譲ってくれているのだ。同じクラスでなくとも、拓海と茜音の関係は同学年の誰もが知っていた。彼がしっかり者の幼なじみなしではいられないことを。
 茜音の友人たちもまた、拓海を煙たがったりはしなかった。ほかの男子と違って粗暴ではなく、おとなしい。女の子どうしのませた会話をしても、あまりわかっていないようで邪魔にはならなかった。仲間というよりは茜音の「おまけ」、「弟」といった扱いだったが、なかよしグループの一員として受け容れられていた。
「あ、あの……」
 茜音の前に、同じクラスの男子がおそるおそるといった様子で近づく。拓海ほどではないが背が小さく、気の弱そうな少年だ。顔色が悪い。見るからに不健康そうだった。
「ん、なに? どうしたの?」
「し、柴田くんが、呼んで来いって……」
 青白い顔が向けた先は、教室の入り口だった。開けっ放しの扉には、大柄な少年の姿があった。
(あいつ……何のつもり?)
 拳を握りしめて席を立つ。相手が望むなら、朝に続いてもう一戦交えるつもりだった。何べん挑まれても負ける気はしなかった。からだの大きな柴田はすぐ掴みかかろうとするが、少女の機敏さがそれを許さない。今朝も伸ばしてきた手を払い、体勢を傾けてやったところに上段廻し蹴りをお見舞いしたのだ。茜音は好戦的な視線をいじめっ子へと向けつつ、足早に向かっていった。
「何? まだ蹴られ足りないの?」
 喧嘩を売るか罵声を浴びせるかしてくると思われたが、意外にも柴田は落ち着いていた。どういうわけか目を合わさず、うつむき加減でちらちらと茜音を見ている。いつもなら、やられた腹いせに口汚い憎まれ口を叩いているところだ。様子がおかしかった。
「あ、あの、よ……」
 ずり下げたカーゴパンツのポケットに手を入れたまま、少年が口を開いた。マントヒヒに似た顔が赤い。妙な空気だった。
(なに? どうしたの、こいつ……)
 柴田はいつだって自信満々の暴君だったはずだ。茜音に蹴倒されるのも今朝がはじめてではない。ぶざまな姿を人に見られようが、めげないのがこの少年だった。落ちこんだり、弱々しい姿を見せるのを何よりも嫌う。
 その彼が、借りてきた猫のようにおとなしい。茜音はすこし気味が悪かった。
「なに? はやくしてよね」
 思わず強い声を放ってしまう。茜音より一回りは大きいからだが、びくりと震えた。
「ち、ちっと、話がある。ほ、放課後……いいか?」
 やっぱりおかしい。普通じゃない。茜音は訝しげに眉をひそめた。悪態ひとつつかないのは、柴田らしくなかった。
「あ、あたしは、話なんかない」
 断るべきだ。きっと何かよくないことを企んでいる。胸が落ち着かなかった。警告しているのだと思った。動悸が早まっていく。
 小さな目が、下から覗きこむように茜音を見つめている。にぶい光を放つ瞳に少女は耐えられなかった。くるりと背を向け、自分の席へと歩き出す。
 背後から、少年の低い声が聞こえた。
「放課後、教室で待ってるから……」



「だ、だいじょうぶ? あかねちゃん……」
 小柄な少年が不安そうに幼なじみを見上げる。澄んだ瞳がうるうると揺れていた。
「平気だってば。あたしが柴田なんかに負けるわけ、ないでしょ?」
 目の高さにある拓海の頭をやさしく撫でる。ふんわりと柔らかな感触が手のひらに伝わった。口ではそういうものの、心配してくれる気持ちが嬉しかった。抱きしめたくなる気持ちを抑え、茜音は幼なじみの背を押した。
「じゃあ、今日はひとりで帰りなさい。いい? 車に気をつけるのよ」
「う、うん……」
 拓海は何度も振り返りながら校門をくぐる。頼りない幼なじみを、茜音は手を振って見送った。姿が見えなくなると、ため息をひとつついてから踵をかえした。向かう先は五年二組だ。約束したつもりはなかったが、柴田の態度が気になっていた。
 喧嘩だけならすぐ終わる。拓海を待たせずに先に帰したのは、あの乱暴な少年が喧嘩を売っているようには見えなかったからだ。柴田は単純な男の子だ。文句をつけるならはっきりと態度にあらわす。昼の彼はあきらかに様子が変だった。
 となると、用件はいったい何なのか。柴田が教室にあらわれた昼休みから、胸騒ぎがおさまらない。悪い予感がしてならなかった。
(なに? あいつ、なにをたくらんでるの?)
 茜音は幼なじみをいじめる乱暴者のことばを、額面どおりには受け取らなかった。何か仕組んで仕返しをしようとしているのだと思った。「話がある」といっていたが、今さら話すことなんかないはずだ。ふたりの関係は、拓海を挟んで宿敵のようなものだった。
 いずれにせよ、茜音は危険を直感していた。柴田ごときに遅れはとらない自信はあったが、万が一ということもある。拓海を遠ざけておくべきだと思った。
 おおぜいのギャラリーの前ならともかく、ひとけのない放課後の教室では、何をしてくるかわからない。いままで幾度となく柴田をやりこめていた茜音には、恨まれているという自覚があった。
 廊下を進む足が、いつになく重かった。


「お、遅かった、な……」
 教室にはほかに誰もいなかった。すでに掃除の時間も終わり、下校時刻を知らせるチャイムが鳴り響いてからずいぶん経っている。五年二組の教室だけでなく、学校内にもほとんど生徒は残っていないだろう。廊下からも足音ひとつ聞こえなかった。
 柴田は窓際に立っていた。沈みはじめた太陽の逆光のせいで、茜音には黒々とした人影にしか見えない。小学生ばなれした体格で識別できるものの、どことなく落ち着きがなく、彼らしくなかった。眩い太陽のおかげで表情がわからないが、窓枠についた手が不自然に硬く、緊張しているようにも見える。
「で、何の用なのよ。わざわざ放課後に呼びつけるなんて」
 腕を組んで余裕を見せつけ、それでも警戒を解かない。喧嘩をしたいわけではなさそうだが、油断をついてくるかもしれない。負けたことがないとはいえ、体格と腕力においては遥かに向こうが上なのだ。捕まえられたら終わりだ。茜音は必要以上に近づかず、一定の距離を保つことにした。
「あ、あの、よ……」
 柴田が、一歩踏み出した。すかさず茜音が一歩退くと、少年は敵意のないことを示すように両手を肩の位置に広げてみせた。逆光のせいでどんな顔をしているのか見えない。しかし、いつもの無駄に胸を張った、威張りくさった態度ではなかった。広げた手の動きも、再放送で観た昭和アニメのロボットみたいな硬い動きに見えた。
「……今日は、ケンカするつもりじゃ、ないんだ」
「だ、だったら、なんなのよ」
 少年の声は穏やかだった。常に強がって虚勢を張る乱暴者とは別人のようだ。鼻の下をこすりながら、彼は先を続けた。
「茜音は……やっぱり……その……タクミのことが、好きなのか?」
「……はあ?」
 予想外の質問におさげ髪の少女は面食らい、ぽかんと口を半開きにしたまま固まってしまった。
「幼なじみだし、そりゃ、す、好き、だよな……い、いや、おれが訊きたいのはそういうことじゃなくって、その……」
 唖然としている茜音が目に入っていないのか、柴田はひとり勝手に話をすすめていく。あきらかに暴走していた。
(なに? こいつ、どうしちゃったの?)
「お、おれ……タクミがきらいなわけじゃなくて……その、いじめたくなんか、なくて……その……なんていうか……」
「柴田! あんた、なにがいいたいの?」
 さっぱり要領を得ない少年を怒鳴りつけた。薄気味悪さを感じながらも、茜音はいらいらしはじめている。持ち前の気の強さが表に出ていた。距離をおくはずだったのに、知らず足を前へ踏み出している。
 はっとして、柴田が顔をあげた。泳いでいた目が、意を決したように少女をとらえる。
「あ、茜音……おれ、おれ……」
 長い鼻から押し出される息が荒い。ただことでない少年の興奮した様子に、茜音は恐怖に近いものを覚えた。冷たい汗が、背を、胸を、脚を流れる。全身が危険信号を発していた。
 けれども遅かった。後退さりする少女の手首を、一回り以上大きな手が捕らえる。
「やっ……! はな、して……!」
 柴田の耳には声がとどいていないかのようだ。大人顔負けの力で、少女の手首を引き寄せる。
(い、いや……! こ、こわい……)
 片手を捕らわれているというのに、茜音は少年の胸を押した。おびえから思わずとってしまった行動だった。だが、体格に差がありすぎた。力いっぱい押してもびくともしない。押しのけようとした手までも掴まれてしまった。
「ひうっ……!」
 少年は細い両手首を拘束したまま、胸を押しつけるように大きなからだを寄せてくる。湿った鼻息が茜音の額にふりかかった。
 生温かい不快さに、少女が背すじをふるわせる。にきびだらけの顔は、間近だと赤く染まって見えた。眼球に血の筋がいくつも浮いている。
「に、逃げないで、くれ……お、おれ、茜音のことが……」
「い、いや!」
 おさげ髪がぶんぶんと横に振られる。結った髪の束がにきびだらけの頬に何度もこすれたが、少年は開いた口を閉じない。今にも泣き出しそうな少女を見つめ、息を大きく吸いこむ。
「茜音が、好きなんだっ……!」
 手の中で暴れていた少女の動きが止まった。放課後の教室は、怒鳴るような少年の声によって静けさを取り戻していた。遠くで烏が鳴いている。
 茜音の目が大きく見開かれた。黒い瞳が上下に動く。
(す、き……? 柴田が、あたしのことを好きっていった……?)
 信じられなかった。柴田とは敵対しているといっていい。茜音にとって、拓海に害を与える者はすべて敵だった。拓海をいじめるということは、自分に喧嘩を売っているのも同じだ。柴田はそれをわかっていて、拓海に嫌がらせをしているのだと思っている。
 その柴田が、茜音のことを好きなのだという。信じられるわけがない。自分をからかっているのだと思った。馬鹿にされているのだと思った。
「ふ……ふざけないでよ! そんなわけ、ないでしょ!」
 かっとなり、頬を染めて自分よりふたまわりは大きな少年を睨みつける。
 茜音は男の子に興味を持ったことがない。姉弟同様に育った拓海にしか、親愛の情を感じたことがなかった。甘えることしかできない幼なじみに夢中な彼女には、少年の男心というものがわからない。強がったり意地になってしまう、男の子の気持ちがわからない。ありのままに感情をあらわす拓海にはないものだった。
 柴田が拓海にちょっかいを出してしまうのは、いつも茜音と一緒にいることにたいしての嫉妬からだった。幼なじみだというだけで、茜音から愛されている。それが気に入らない。当然のようにべたべたとからだを寄せるのを見ていると、腹が熱く煮えたぎった。
 それだけではない。ひねくれ者のな彼は、別のクラスになってしまった茜音に用事もなく会いに行くこともできなかった。このままでは憧れの少女と一緒の空気を吸うこともできない。自分から会いに行けないのなら、来てもらうしかない。
 不器用な柴田には、拓海を小突くほかに方法が見つからなかった。いじめられた幼なじみの仕返しに茜音がやってくることさえ、彼にとっては愉しみだったのだ。脳震盪を起こすほどの蹴りを喰らうことと引き換えにしても、大好きな少女の顔を見たい。憎まれ口を叩くのも、ひねくれた愛情の裏返しだった。
 好きな女の子に、ついつい意地悪をしてしまう。素直にはなれないが、気を引きたい。正直には言えないが、構ってもらいたい。少年らしい心の機微を、茜音にはまだ理解できなかった。
「あたしは、あんたなんか嫌い! 弱いものいじめばかりして、最低! だいっきらい!」
 ことばが過ぎていた。いつもの茜音なら相手を叩き伏せることはあっても、ことばの暴力はつかわない。肉体は傷つけても、心は傷つけない。
 両手首を押さえられ、からだの自由を奪われている。鼻息があたるほど顔を近づけられ、思ってもいなかった告白をされた。そのことが少女に動揺を与え、かわいらしいくちびるの間から行き過ぎた罵声が飛び出したのだった。
「っ…………!」
 少年の顔が蒼ざめる。分厚い唇までもが色を失っていた。手首を握る力も弱まっていたが、あまりにも傷ついた柴田の表情を目にして、茜音は逆にショックを受けていた。振りほどくより先に、謝るべきだと正義感の強い少女は思った。
「あ……その、ごめん……いいすぎ……」
 謝罪のことばはしかし、もう意味をなさなかった。大きな影が少女に覆いかぶさる。ふいをつかれた茜音は、教室の固い床の上に押し倒されてしまった。
「うぐっ……!」
 ふたりぶんの体重が、衝撃となって背から胸の上までを貫く。少女の愛らしい顔が、苦痛に歪んだ。
「な、なに、するのっ……んうっ……!」
 抗議の声をあげる前に、茜音のくちびるは塞がれた。傷心の乱暴者の唇によって。のしかかった柴田は、少女の両手を広げさせ、床に押しつける。
「えううっ……!」
 首を左右に振って逃れようとするが、分厚い唇は執拗に追いまわし、それを許さない。避けても避けても、無駄だった。少年を諦めさせることができない。口だけでなく、胸も、腹も、その下までも、茜音のからだで自由に動かせるところはなかった。華奢な肉体は、柴田の体重と腕力によって完全に押さえつけられている。抗うこともままならない。
「い、いやあっ……やめてっ……!」
 目尻に涙が溜まっている。叫ぶために口を大きく開けたのは失敗だった。間髪いれずに少年が舌を入れてくる。生温かい湿ったなめくじのような物体が、茜音の口内に侵入してきた。
「やううっ……!」
 頭をはげしく揺らして避けることができたが、全身をぞわぞわとした悪寒が駆けめぐっていた。
「はあっ、ふうっ、ふう……」
 涙目になりながらも、上にいる少年を睨みつける茜音。けれども、黒い瞳には力がない。おびえ混じりの眼光は、迫力に欠けていた。
「……お、おれ、知ってるんだぜ……放課後、ここで、タクミのやつと、してることを……」
 今度は茜音が真っ青になる番だった。誰にも気づかれていないと思っていたのだ。教室の扉は閉めきっていたし、校内には生徒が残っていないと思いこんでいた。
(見られてた……よりによって、柴田に、見られてた、なんて……)
 自分のうかつさを呪うが、今となっては後の祭りだった。
「みんなにばらしても、いいんだぜ……」
(この、ひきょう者……)
 勝ち誇ったような顔に、唾を吐きかけてやりたかった。二度とへらず口をきけないように、叩きのめしてやりたかった。けれども、茜音は床に押し倒され、身動きがとれない。決定的な弱みを握られてもいる。耳に向かってひとすじの涙が落ちてゆく。
 ふたりの秘密を暴露するといっても、柴田のいうことだ。誰も信じないかもしれない。素行が悪く、周囲に迷惑ばかりかけている男子なのだ。担任教師ですらまともに取り合わないかもしれなかった。しかし、万が一彼のいうことに耳を傾ける者がいれば、茜音には絶望が待ち受けている。
 拓海と茜音は学校でも密着しすぎていた。いくら小学生とはいえ、成長著しい時期でもある。仲が良いのにも限度があった。ほかの生徒への影響もあり、いささか目にあまると、学校側からふたりの家庭へ通告されたこともある。
 もちろん、拓海の父母も茜音の両親も、教員のことばを深刻に受けとめたわけではない。むしろ仲の良いふたりを微笑ましく見守る立場だった。
「姉弟みたいなものなのに、ねえ。でも、すこし気をつけたほうがいいわね」
 ふたりの仲を、小学生どうしの無邪気なものだと疑わない。子供がじゃれあっているだけで、間違いなど起こるはずがないと思っているらしかった。
 しかし、このことが彼らの耳に入ってしまったらそうはいかない。幼なじみのズボンを下ろして、未熟な陰茎をしごいていたなどということが知れたら、親として放ってはおけない。つきあいのあるお隣同士といえども、子供たちに距離を置かせるはずだ。まして拓海の母親は過保護だ。転校させてしまうかもしれない。そうなってしまったら、拓海と逢うことも許されなくなるだろう。
 何よりおそろしいことだった。拓海がそばにいない毎日なんか考えられない。愛くるしい笑顔も、嬉しそうにすり寄ってくる甘えん坊の姿も、一番の宝物だ。茜音にとって、かけがえのないものだった。
 拓海の恐怖はそれ以上だろう。幼なじみに完全に依存しているのだ。茜音がそばにいなければ、日常を過ごすのさえ難しい。また不登校になってしまうかもしれない。
 自分を失ったあとの拓海が心配でならない。茜音の名を呼びつづけ、毎日を泣いて暮らす姿が容易に想像できた。それまで庇護していた存在が、とつぜんいなくなる。心の弱い泣き虫に耐えられるわけがなかった。
 血の気が失せたくちびるに、少年がふたたび口を押しつける。抵抗はなかった。手首は拘束から放たれていたが、力なく床の上に置かれている。荒々しい手が、両側から柔らかな頬を挟みこんでいた。
「んっ……んぢゅっ……んんっ……」
 柴田は夢中になってさくら色のくちびるに吸いついている。卑猥な音をたてて少女の口を吸い、かたちをなぞるように内側を舐めまわした。
(タクミとしか、したく、ないのに……)
 茜音は眉をぴくぴくとさせながら、口への陵辱に耐えている。卑劣な脅迫に抗うすべが見つからない。悔しくて、悲しくて、涙が次々と溢れてくる。
 ぬるぬると湿った物体が、遠慮なく口内へ侵入してくる。生臭く、不快だった。健康的な白い歯を噛みしめて侵入を拒んでいたが、つつかれ、催促されて少女は要求に屈する。開かれた紅唇に、少年は鼻息荒くしゃぶりついた。
「んぶっ……んむっ……」
(い、いやあっ……! きもち、悪いよおっ……)
 全身にぞわぞわとした寒気が走る。耐えがたいおぞましさだった。自由になっていた両手で少年の背をばんばんと叩く。けれども不自然な体勢からの攻撃は、まったく効果がなかった。柴田は意に介してもいない。少女の顎をがっちりと両手で固定し、甘い口内を味わっていた。舌は口内のすみずみを這い回り、臭い唾液を流しこんでくる。
「んううっ……えう……!」
 ほとんど動かない首を、茜音は必死で振った。吐き気すらもよおしていた。できることなら無遠慮な舌を噛み千切ってやりたかった。
 涙で濡れた瞳で、からだの上に覆いかぶさる少年を見上げる。鼻がこすれる距離で見る柴田の顔は、はげしい高ぶりに少年らしさを失っていた。まぶたから突き出た目玉が充血している。広い額には血管が幾筋も浮いていた。ふん、ふん、と鼻から勢いよく吐き出される息が、いまでは頬にあたるとひりひりするほど熱い。嫌悪感だけでなく、茜音は恐怖を覚えはじめていた。
(い、いや……なに……こ、こわい、よお……)
 さんざん叩きのめしてきた相手が、おそろしい存在に見えた。取るに足らない、自分の足もとにも及ばないと思っていた少年が、自分を圧倒している。脅迫されているとはいえ、上に乗られては手も足も出なかった。大きな肉体でのしかかり、美味そうに口を吸い、味わっている。少女を骨までしゃぶりつくす鬼のように思えた。
「んぷっ……ちゅううっ……」
 舌を吸われた。先端を含まれたまま、舐めまわされる。肌が粟立ったが、茜音は抵抗する気力を失っていた。手足もこわばってしまい、動かない。少年の生臭い口や舌の責めを受け容れるほかなかった。
(ごめんね、ごめんね、タクミ……あたしのくちびる、タクミだけのものだったのに……)
 深く閉じたまぶたが乾くことはなかった。身を固くしながら、茜音は胸の内で幼なじみのあどけない顔に詫びる。せめて拓海のことを考えていたかった。しかし口中を満たしつつある異性の唾液が、はげしい悪寒となってみじめな現実を伝えていた。塞がれたくちびるの端から、透明な液体が溢れて顎までをつたっていく。
「ふうっ、ふうっ……」
 ようやく柴田が口を離した。名残惜しそうに少女の口もとを見下ろしている。茜音の口に飽いたのではなく、呼吸が続かなかったのだろう。口からこぼれる呼吸は大きく、不規則だった。
「うええっ……えうっ……」
 押さえていた手から解放されたとたん、少女は注がれた唾液をすべて教室の床へと吐き出した。目が赤い。吐いても吐いても足りなかった。口のなかに、男の生臭さが残っている。
「ち、ちくしょう……タクミの唾は喜んで飲めても、お、おれのは汚いって、いうのか……!」
 少年の顔が朱に染まる。茜音が危険を察したときにはすでに平手が飛んでいた。
――ぱんっ! ぱあんっ!
 馬乗りの体勢での平手打ちには、まったく容赦がなかった。頬に灼けるような痛みが走る。茜音は声ひとつあげなかった。意地からではない。悲鳴をあげる余裕がなかったのだ。逆上した少年の姿はいつもよりずっと大きく見えて、ただおそろしかった。
「はあっ、はあっ……」
 柴田は肩を上下させている。血走った目はおびえた瞳をとらえていた。分厚い唇の端が歪む。純情な想いを伝えようとした少年の表情はすでに消え、欲情した男の顔がそこにはあった。
 細い腰に跨った少年は、かちゃかちゃと音をたててベルトのバックルを外した。いまだ抵抗を気にしてか、ちらちらと少女を窺いつつ腰を浮かしてズボンを下ろす。
(い、いや……なにをする、つもりなの……)
 トランクスが、突き破らんばかりに張っている。にやついた目で見下ろされ、茜音は絶望的な気分を味わっていた。
 柴田は恥ずかしげもなく、最後の一枚を脱ぎ捨てた。浮かせていた腰を、ふたたび少女のからだの上に沈ませる。今度は胸の上だった。
「うぅっ……やっ……」
 ふくらみかけの乳房を押しつぶされ、短いうめきが少女の口からこぼれる。苦しそうに眉間をふるわせたが、顔を背けたのは小学生ばなれした体重のせいばかりではない。鼻先に突きつけられた肉棒のためだ。
(や、やだ……。タクミのより、ずっと、おっきい……)
 床に頬が触れるくらいに避けつつも、茜音は薄く開けたまぶたの間から少年のペニスを盗み見ていた。逞しく勃起した肉棒は、見慣れた幼なじみのものとは形状が異なり、かわいげがなかった。
 包皮はすべて剥けていて、余った部分などなかった。亀頭は猛り狂ったように赤く、ぱんぱんに張っている。根もとには縮れた黒い毛が、黒々と群生していた。大きさも段違いだ。両手で握ってもお釣りがくるかもしれない。拓海のペニスは握るというよりつまむほどの大きさしかない。まるで別のものだった。
「へ、へへ……どうだ。た、タクミのお子さまチンポとは違うだろ」
 上ずった声で、それでも誇らしげに柴田が笑う。根もとを指で押さえつけているが、離せば下腹部まで跳ね上がりそうだ。張りつめた勃起は反り返ってさえいた。
(い、いや……びくってしてる……こわい……)
 誇らしげに見せつけてはいるが、茜音にとってはもちろん喜ばしいものではない。青い血管の浮いた硬い肉の棒は、あどけない端正な顔をしかめさせるだけだった。凶悪な見た目もそうだが、臭いがひどかった。
(なに、この臭い……)
 尿や汗の臭いに混じって、蒸れたような体臭が鼻をつく。動物園の檻近くに漂っている、獣の臭いに似ているかもしれない。とても好きにはなれそうにない臭いだった。
 悪臭に表情を歪める茜音を、少年は許さなかった。わずかに尻を浮かせ、上体を前のめりにさせながら、勃起の先で柔らかな頬をこする。
「ひっ……や、やめて……」
 ペニスの体温がつたわる。やけどしてしまいそうなほど、肉棒が熱く感じられていた。先ほど叩かれたところが、じんじんと痛む。
「おっ、おほっ……茜音のほっぺた、気持ち、いい……」
 柴田ははしゃいだ声を出して、ぐりぐりと茜音の顔にペニスを押しつけている。亀頭の先端からは先走りが溢れ、なめらかな肌を汚した。飽き足らないのだろう。ぬるぬると透明な汁を、肉棒をつかって引き伸ばしている。粘りのつよい汁が、鈴口との間に糸をつくる。少年の長い鼻の下が、伸びきっていた。
「いや……おねがい、だから……やめ、て……」
 ついに少女の口から哀願の声を漏れる。柴田は長い鼻の穴をふくらませて大きく息を吐いた。気のつよい、誇り高い少女を泣かせている。いつも自分を蹴り倒す少女を、泣きつかせている。
 おさげの美少女は、男子の憧れの的だった。誰にも屈しない気高さから、近づきがたい雰囲気を持つ少女。それが茜音だった。拓海が常にそばにいるせいで、無謀な告白をする男子は皆無だったが、誰もが少女の麗しさを認めている。男子のみならず女子生徒のなかにも、ひそかな憧れを抱いている者は多い。
「はあ、はあ……」
 その少女がいま、自分の手のなかにある。柴田ははげしい興奮に包まれ、呼吸もままならなかった。当初は純粋な想いの告白であったが、暴走した少年の勢いは止まらない。蜘蛛の巣にかかった美しい蝶を、手折ってやりたい衝動に駆られていた。
「ひんっ、痛いっ……!」
 結った髪を乱暴に掴んだまま、少年はその場に立った。引き起こされた茜音の目の前に、だらだらと嬉し涙を流している亀頭が突き出される。胸に跨られていたときよりも、いっそう大きく見えた。
「く、口、開けろ! おれのチンポ、しゃぶれ、茜音!」
 ひどく高ぶった声。声の調子が、ところどころおかしい。おびえに負けそうになりつつも、少女は弱々しく首をふるふると横に振った。
「い、いいのかよ? タクミとのこと、ばらしちまうぞ」
 小さな目が嘲っている。茜音はいまや籠の鳥と同じだった。卑怯きわまりない脅迫という檻から、抜け出すことができない。
(タクミにも……したこと、ないのに……)
 睫毛を伏せる。生臭い牡の臭いに息を止めながら、少女はさくら色のくちびるを開いた。恋愛感情をもつどころか、毛嫌いしている男子のペニスを受け容れるために。
「おッ……」
「えううっ……」
 亀頭が下くちびるに触れる。ふたりの声はほぼ同時だった。ぽってりとしたくちびるが、赤く張った笠の部分に押しつぶされている。
(うええっ……くさいっ、苦いっ……)
 覚悟して口を開いた茜音だったが、悪臭とくちびるの内側へ入りこんでくる先走りの苦味を受けつけることができない。だらだらと小さな裂け目から垂れる透明な汁は、歯の間から口内へと染み入り、口内を侵している。
「き、きもち、いいっ……!」
 首を振って逃れようとする前に、大きな手が少女の頭を力強く挟んでいた。異物が、奥へと侵入してくる。むわっとした男の臭いが、ますますきつくなった。
「ううっ、えううっ……!」
 ことばにならない声で必死に拒絶を訴えるが、少年の腰は止まらない。舌の上を、熱い肉棒の先がこすり、通っていく。粘り汁の味が、舌いっぱいに広がった。
「ふううんっ……!」
 仔犬が鼻を鳴らしたように聞こえたのは、少女の悲鳴だった。不快感から弱々しい声が出てしまったのだ。先走りの汁の苦味を避けようと、小さな舌が口内で逃げ場所を探して動きまわる。けれども柴田の肉棒は大きすぎた。どこへ寄せても熱を放つ肉棒に触れてしまう。亀頭や肉幹に舌を這わせているのと同じだった。
「茜音っ、それ、いいっ……! なめてっ、チンポ、もっと、なめてっ……!」
 積極的に奉仕してくれていると勘違いしたのか、柴田がさらに愛撫をせがんだ。途切れ途切れに吐き出される息は熱く、股間に顔を埋めて揺れるおさげ髪をじっとりと湿らせている。ひどく興奮しているようだった。
(いやあっ……きもち、悪いっ……)
 口いっぱいに頬張らされたペニスは、喉に近いところまで押しこまれていた。むせかえるほどの悪臭と、熱を持つ肉の棒の感触。生理的嫌悪感が茜音の全身を粟立たせる。ペニスと先走りの味は唾液と混じって口内に溜まっていく。
「えうぅっ……んんん……」
 眦からぽろぽろと水粒がこぼれ落ちる。ぼやけた瞳で見上げた少年の顔は、茜音の口から与えられる快感に悦びを得て歪みきっていた。口はだらしなく開き、端からはよだれすら垂れている。鼻の穴は大きく収縮し、開かれた口とともに忙しく呼吸を繰り返していた。小さな眼球は飛び出すほど見開かれ、血走った視線は己のペニスが呑みこまれた紅唇を凝視し、瞬きさえ忘れているようだ。
「なめてっ、茜音、なめてよっ……!」
 はあはあ、と荒い息を吐きながら、柴田は懇願に近い声を出した。いつもの威張りくさった態度はもちろん、先ほどまで茜音を脅していた卑劣さともかけ離れた表情だった。憧れの美少女の口にペニスを含ませているという夢のような現実に、我を忘れてしまっている。大きく開いた鼻の穴の下が伸びていた。
「は、はやく、はやくっ……!」
 焦れた少年は、髪を結ったリボンを鷲づかみにして腰を小刻みに揺すった。
「ふ、うぐぅっ……!」
 亀頭に喉を突かれ、茜音がくぐもった悲鳴を漏らした。少女の平手が素肌の太股を幾度も叩く。少年が腰を引いたときには、大きな瞳が充血して真っ赤になっていた。
「うぇっ、けほっ、けほっ……」
「あ、茜音が、悪いんだぞ! なめろって言ってるのに!」
 柴田は半ば狼狽している自分を誤魔化すように怒鳴り散らした。さすがにやり過ぎたと思ったのかもしれない。しかし、一度火のついた劣情は冷めるどころか燃えさかるばかりだった。少女の苦悶の表情に刺激されたのか、喉奥を突いたことが高ぶりを呼んだのか、少年のペニスははちきれんばかりに大きく膨らんでいる。
「ほら、な、なめろ! しゃぶれよ、おれのチンポ!」
 むせていた少女は回復するとともに、くちびるに亀頭の先を押しつけられた。もう見たくもない代物だったが、拒否したところで欲情した暴君は納得しないだろう。射精しないことにはおさまらない。茜音は幼なじみとの秘密の戯れによって、男性の生理を知っている。
(ごめんね、タクミ……)
 心のなかでもう一度拓海に謝ると、茜音は自分から逞しい勃起を口に含んでいく。涙がとめどなく頬を流れ落ちる。心も、からだも、すべてを拓海に捧げたかった。果たされない想いを悔やみながら、少女は灼けるように熱い肉棒をくちびるで挟んだ。
「お、おおッ……」
 小学生にしては太すぎる脚がびくびくと震える。さくら色のくちびるが、やさしくペニスを包んでいた。少女の口がわずかに開き、勃起を咥えなおす。繰り返されるたびに、わずかずつ肉棒は温かい口内へと呑みこまれていった。
「んっ……んぷっ……」
 背すじを駆け登るぞわぞわとしたおぞましさは、依然として少女のからだを覆いつくしている。舌の上には苦みのある粘液が、次々と注がれていた。
 少年の尻がわずかに揺れている。狙いすましているのか、亀頭が舌の上をぐりぐりと何度も突く。はねのけたくなるのを堪えつつ、茜音は無遠慮な肉棒を音をたてて吸った。
「はわわッ……!」
 乱暴者の慌てた声が頭上で響く。股間の周りがひくつき、不ぞろいの陰毛を揺らした。さらに勃起が膨らむのを、茜音は締めつけるくちびるで感じていた。
(あ……もう、限界、なんだ……)
 大きさや外見は違えど、同じ男性器であることに違いはない。茜音は幼なじみのもので慣れている。柴田が射精を迎えようとしていることを察していた。
 これで、終わる。拓海以外の精液など目にしたくもなかったが、いまは一刻も早く乱暴な脅迫者から逃れたかった。そのためには睾丸に溜まる欲望を放出させなければならない。
 茜音は卑劣な少年のペニスを、柔らかなくちびるで吸いあげた。口のなかで裏側の筋に舌をあてがい、尿道口から亀頭の笠の部分を幾度も往復させる。熱く濡れた少女の口内で、肉棒は至福の奉仕を味わっていた。
「あ、あかねっ……! あかねっ……!」
「んっ……ちゅ、ちゅうっ……!」
(はやく、はやく、終わって……!)
 少女の口戯は稚拙だった。しょせん、過激なティーンズ雑誌で得た耳知識でしかないのだ。だが、性に不慣れな少年の勃起にはこの上ない甘美な刺激を与えていた。自慰のオカズにしていた美少女に勃起したペニスをしゃぶらせ、しかも亀頭を包むように舐めまわされているのだ。長く耐えられるわけがなかった。
「で、出るううっ……!」
 無意識だったのだろう。柴田は両手でおさげ髪を抱えこもうとした。反射的に、茜音が頭を後ろに退く。喉を突かれないための、防衛本能からの回避だった。
 肉棒が外の空気に触れた瞬間、脈動がはじまった。
「やあんっ……!」
 極限まで張りつめていたペニスが、釣り上げた魚のように跳ねまわる。そのたびに、熱く勢いのある白濁液が先端から噴射された。すべすべの頬に。伏せられた長い睫毛の上に。わずかに開かれたくちびるの間に。そしてさらさらとした前髪の上にも、汚濁は容赦なく降りかかった。
(いやっ……汚いっ……!)
 収縮を繰り返す肉棒が吐精を終える前に、茜音は顔を背けていた。青臭くどろりとした白液は、不快なだけだった。拓海との戯れでは自分から進んで舐めとる液体も、憎々しい少年の出したものでは汚らしい排泄物と同じだ。少女はくちびるや顔に付着した男の体液を、何度も手や腕で拭った。
「はあーっ、はあーっ……」
 大量の吐精を終えた柴田は、肩で息をついていた。ごしごしと精液を拭き取ろうとする少女を、うつむきかげんで睨みつけている。茜音が暗い視線に気づいたのは、しばらくしてからだった。
(な、なに……? いやっ……まだ、勃起してる……)
 黒い瞳に、ふたたびおびえの色が戻る。少年のペニスはまったく硬度を失ってはいなかった。亀頭の先から濁液を垂らし、茜音へと矛先を向けていた。
 柴田の眼光は、なお少女の不安を掻き立てた。ぎらぎらと鈍く輝き、血の浮いた眼球は赤く染まっている。貪欲な少年の性は、一度の射精では満足しなかったのだ。
「やっ……!」
 男への恐怖から、茜音は後ろへと下がった。足がもつれてしまい、尻餅をつく。そこへ、少年の手が伸びて、細い足首を掴む。
「やっ、やだっ……! やめてっ……!」
「ふうっ、ふううっ……」
 獣のような不規則な息づかいが、少女のからだから血の色を奪っていく。暴君の顔面を蹴り上げるはずの脚が、ふるえて動かない。抵抗のないのをいいことに、柴田はスカートを捲り上げた。
(やだ、やだ、やだあっ……!)
 心の叫びもむなしいだけだった。下半身に覆いかぶさった少年は、小さなショーツに手をかけると、いともたやすく剥ぎ取っていく。
「あ、茜音の、まんこ……」
 少女の未発達な性器の周りには、まだ敏感な部分を覆い隠す繁みが存在しない。下着を除かれたいま、つるりとした割れ目を保護するものは何もなかった。無遠慮な視線が、突き刺すように痛かった。
「お、おねがい、柴田……やめ、て……」
 自分でも驚くくらい、弱々しくかすれた声だった。涙が止まらない。自信に満ちたいつもの声とはまるで違う。男子になんか負けないと自負していた、皆の羨望を集める少女の姿はそこになかった。
(あたし、このまま柴田にレイプされちゃうの……? いや、だ……そんなの、いや……)
 少女の脚は大きく開かされていた。乱暴な指が、割れた柔肉をなぞる。爪が伸びた指先が繊細な秘肉をこすり、茜音は苦痛に顔を歪めた。
(いや……あたしの処女は、タクミにあげるって、決めてたのに……タクミじゃなきゃ、いや、だよ……)
「へ、えへへっ……茜音のまんこ……きれいだ……」
 柴田は両手の指を使って無毛の秘唇を広げていた。指先が、未通の膣孔に触れる。
(だ、だめええっ……タクミっ……!)
 失ってはいけないもの。最愛の人に捧げるべきもの。少女はそれを守るすべを、もはや持っていない。けれども、抗った。そして叫んだ。この世の誰よりも愛しい者の名を。
「たすけて、タクミっ……!」
 白い脚の間で下卑た笑いが起こる。嘲笑っているのが、茜音にはわかった。誰も助けになど来ないのだと。よりにもよって泣き虫の拓海を呼んだところでどうなるのかと。嘲笑いながら、柴田は指を割れ目の間に突き入れた。
「ぎっ……!」
 いまだ何者も受け容れたことのない、清らかな秘処だった。自分の指ですら、入り口までしか入れたことがない。拓海を迎え入れるために傷つけずにとっておいた場所。拓海のためだけに。
 それなのに、暴君の指が割れ目を押し広げて半ば近くまで埋まっている。茜音はからだだけでなく、心までも引き裂かれるような苦痛を味わっていた。
「い、いやあああっ……!」
 絶叫だった。教室のガラスがきしむくらいの大音響。うろたえる柴田の下で、少女が泣きじゃくりながら手足を床上にばたつかせた。
「きらいっ! 柴田なんか、大きらい! いやあっ! あっち、いって、よおっ!」
 幼い子供が癇癪を起こしているのと同じだった。でたらめに振り回す拳や蹴りが、少年のあちこちを叩く。痛みはほとんどなかったが、柴田は完全に気勢をそがれていた。
「あ、茜音……」
「やだあっ! やだよう……タクミ……タクミ……」
 暴れ疲れたのか、茜音はうずくまってぐすぐすと泣き出した。伸ばされた少年の手に、びくりと身を縮める。
「ご、ごめん……おれ、ほんとは、こんなこと、するつもりじゃ……」
 弁解は無駄だった。少女は幼子のように顔を伏せて泣いているだけだ。聞こえているかどうかも疑わしい。
「だ、誰にも、いわないよ、おれ……」
 脅迫者の顔に、はげしい後悔が浮かびあがっていた。青ざめた顔をしながら、柴田は脱ぎ捨てた衣服を抱えて教室を走り去っていく。
「ううっ……ぐす、ぐす……タクミ……」
 窓から入る陽射しは弱まっていた。教室がオレンジ色に染まりはじめている。
 どれくらい泣きつづけたのだろう。ひとり膝を抱えて泣きつづける茜音のそばに、小さな気配があった。人影が、眩しい夕陽を遮っている。
「タクミ……」
 ぼやけた瞳で見上げる少女の前に、心配そうに見つめる少年の姿があった。


テーマ:18禁・官能小説 - ジャンル:アダルト

  1. 2010/06/06(日) 06:06:07|
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Author:臥頭狂一
(がとうきょういち)
 日々、頭痛に悩まされながら官能小説を書いています。
 いろいろなジャンルに手を出していくつもりです。よろしければ読んでいってください。
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